苔の育成レポート スナゴケ・ハイゴケの増やし方⑦ まきゴケ331日目 20160211
2016/03/05
2015年3月20日に、スナゴケ・ハイゴケの2種を混合した苔のタネを蒔いてから、およそ1年が経とうとしています。生ゴケを1週間程度乾燥させて細かく粉砕したもの、乾燥させただけのもの、そして生ゴケそのものの3種類の苔を蒔き、同じ環境で育てて比較できるようにしています。
育成コンセプトとしては、できるだけ自然環境に近い状態で過保護にしないこと。よほど乾燥した日が続かない限り水やりはやっていません。それもタネを蒔いてから最初の数か月だけで、ここ半年は一度も水やりをしていません。苔の生産業者が行っているような万全な管理下ではなく、一般家庭の素人でも苔マットをつくって苔を量産できるのか試しています。
◎タネを蒔いた時の様子はこちら⇒苔の育成レポート スナゴケ・ハイゴケの増やし方① 20150320
生長はみられるもののまだ完全な苔マットには至らず
では、様子を見てみましょう。前回のレポートが2015年8月14日ですから、さらに7ヶ月が経過したことになります。
今までのレポートと並べる順番を間違えました!右から「乾燥させて粉砕した苔のタネ」「乾燥させただけの苔のタネ」「生ゴケのまま」という順です。
そして、下の写真が昨年の8月(約7ヶ月前)の時の写真です。(並び順は逆です!左から 乾燥+粉砕⇒乾燥のみ⇒生ゴケ)
太陽の光の当たり方が異なっているのでわかりにくいですが、7ヶ月前に比べて表土の見える面積が減り、立体感が出てボリュームが出てきていますね。
次にいつもの通り、蒔いたタネの種類ごとの様子です。
乾燥させて細かく粉砕したスナゴケ・ハイゴケの種をまきゴケしたもの
スナゴケとハイゴケがほぼ同じボリュームで育っている感じがします。細かく粉砕したことでそれぞれが均一に混ざったからでしょうか。
乾燥させてほどほどにほぐしたスナゴケ・ハイゴケの種をまきゴケしたもの
先ほどの、乾燥させた上に細かく粉砕したものよりもスナゴケが目立っており、スナゴケが小さなコロニーを形成しつつあるように見えます。
続いて、生ゴケをほぐして蒔いただけのものも観察してみましょう。どの画像もクリック(スマホはタップ)で拡大してご覧いただけます。
生ゴケをほぐしただけのスナゴケ・ハイゴケの種をまきゴケしたもの
どうでしょう。こちらもスナゴケが目立っていますね。スナゴケの密度は「乾燥させてほどほどに~」に比べるとやや薄いですが、スナゴケがもこもこと寄り添いながら育っている感じです。
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苔人なりの考察
これまでと今回の観察を経て思うことは、
1.細かく粉砕した苔のタネを蒔く⇒少ない量でも広範囲に均質に蒔ける・発芽速度がやや早い。ただし、複数種混合だとコロニーを形成するまでに時間がかかるのではないか。
2.もみほぐしただけの苔のタネを蒔く⇒タネとする苔の量は必要とし、粉砕したものよりやや発芽は遅くなるが、生長後のコロニーの形成が比較的早いのではないか。
ということです。
蒔きゴケ法では一般的に「苔を粉砕して蒔く」と解説されていますが、蒔く時は1種類のみの苔のタネの方が良いのかもしれません。粉砕して蒔いた方が、苔庭づくりに置いては調達する苔の量も減らすことができますし、広範囲に均質に蒔くことができるので有効だと思いますが、複数混合だとコロニー形成まで時間がかかるという仮説がもし合っている場合は、コロニー形成までの期間乾燥のリスクにさらされるということになるので、ある程度生長してきたら目土入れや水やりに気をつかう必要があるかもしれません。
一方、狭い範囲でできるだけ早くもこもことした密度の濃い苔庭(苔スペース)にしたい場合で、貼りゴケ法よりリーズナブルにやろうとすると、苔を適度にほぐしただけの蒔きゴケが良いのかもしれません。その場合、私のレポート上では、生ゴケよりも一度しっかり乾燥させた苔を使用した方がやや発芽・生長は早いようです。
ただし、上記については「自宅で育てるレベル」が前提であり、苔の生産業者のように苔を早く質よく育てる環境が整えている場合は除きます。
うーん、まだまだわからないことだらけです。今後も引き続き観察していきたいと思います。
→続きをみる「苔の育成レポート スナゴケ・ハイゴケの増やし方⑧ まきゴケ354日目 20160305」
→蒔きゴケ(まきゴケ)用の「苔の種」の作り方
→苔の植えつけ ②蒔きゴケ法(まきゴケ法)
→苔の種類ごとのおすすめ培養土
→苔庭の育て方・年間管理<ハイゴケ>
→苔庭の育て方・年間管理<スナゴケ>
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Comment
偶然、サイトを見て、苔の育成レポートを拝見しました。しっかりとした試験と、観察をしておられることに感動し、メッセージしました。
試験を通じて、苔の種の効果について、なかなか鋭い考察を加えており、うなづくことしきりでした。
苔の種を乾燥し細かく裁断する理由について、苔人さんのお考えは、ほぼ、合っております。苔神の試験では、乾燥を加えると発芽率が高くなります。細かくすると発芽数が増加します。ただし、発芽数が増加すると、成長速度が遅くなります。
それ以外にも、乾燥を加えることで、苔の種の保存期間を長くすることができますし、おっしゃる通り、裁断が容易にもなります。また、均一な播種も可能になります。
近年、苔が注目され、苔の需要も増えていますが、そのために自然界の苔が減少しています。苔の魅力は言葉では表現できませんが、そのために苔を採取するだけではなく、苔を増やすように心がけたい、と苔神は考えています。その苔を増やす方法、技術手段は、まだまだ、開発途上です。多くの方が、苔を育て、増やすということに心を寄せて頂けることを望んでいます。
はじめまして、苔人です。まさか苔神 北川さんにコメントをいただけるなんて思ってもいませんでした!私の育成レポートに対し、北川さんのご見解も合わせて教えていただき感激しております。
他の記事でもたびたび北川さんのことに触れている通り、熱心に苔を研究してらっしゃる姿勢・その内容・考察などすべてにおいて以前より参考にさせていただいておりました。
私は趣味に毛が生えた程度ではありますが、数年前にひょんなきっかけから苔の美しさや不思議さに魅了され、同じように苔が気になる人に苔の魅力をもっと知ってもらえる役に立てればと思い、素人ながら1年前に「苔日和」を開設いたしました。北川さんと考えは同じで、自然の苔をむやみに採取するのではなく、育て、増やすことも苔の楽しみ方と思っていただける人が増えたらという願いを込めながら情報を発信しております。
引き続き温かく見守っていただけますと幸いです。