苔玉の育て方で水やりと施肥、置き場所以外に忘れてはいけない大事なこと
2016/03/05
インターネット上で「苔玉 育て方」で検索してみると、たくさんの記事が見つかります。ただ「水やり」と「置き場所」についてのアドバイスに偏っているように思えます。今回は苔玉を長く楽しむ上で「水やり」や「置き場所」以外にも管理上必要なやるべきことについてです。苔の方より、一緒に植わっている植物の方に重点を置いた話になります。
苔玉も「植え替え」と「剪定」が必要
結論をまずお伝えすると、必要な項目とは「植え替え」と「剪定」です。水やりに比べると 少々面倒くさいことのように感じるかもしれませんが、これらを怠ると多くの植物は長続きしません。特にモミジやウメなど本来何メートルにもなる樹木には必須です。背丈の高くない草花でも植え替えが必要だったり、剪定が必要な種類があります。
苔玉は小さな世界に自然を再現している
苔玉や植木鉢、盆栽に植えつけている植物は、自然界で生きるよりも極端に狭く小さな世界に閉じこられている状態です。大きな自然を小さいスペースの中で表現する人間にとっての”美”のひとつではありますが、植物からしてみれば非常に不自然な状態ですよね。
一番制約を受けているのが根元の培養土の量です。培養土が蓄える水分や養分の量が限られているため、植木鉢の植栽よりも水やりや施肥の工数がかかるわけです。加えて、今回のテーマの「植え替え」と「剪定」が必要になってきます。
では、なぜ植え替えと剪定が必要なのかみていきましょう。
“根づまり”による枯れから守る植え替え
苔玉や植木鉢など、ごく限られたスペースに植えていると、生長とともに根も生え広がり、そのまま放置して置くと根づまりを起こします。根づまりとは、培養土の中でびっしりと根がまわり、それ以上の根の生長余地がなくなってしまった状態のことを言います。
根づまりを起こすと次のような問題が出てきます。
水切れを起こしやすい
根同士の隙間がなくなり、水をあげても十分に根全体に水分がまわらなくなります。鉢植えの場合だと、水をたくさんあげたのに鉢底から水がにじみ出てこなくなるというサインが出ますが、苔玉の場合は丸ごと水につけたり、全体に水をかけたりするので植木鉢のようなサインがありません。ある程度生長し、葉が茂ってきたら根づまりを起こす可能性が高まってきていると考えましょう。
根腐れを起こしやすい
根腐れは極端な水切れ、水や肥料のあげ過ぎの他、根づまりによって根が圧迫され窒息することでも起こります。根腐れを起こすと水をあげているのに葉っぱが萎えてきたりするのですが、早期に根腐れに気づかないと回復させるのが困難になります。葉先から色が変わってくるとかなり深刻な根腐れを起こしている可能性があります。
根づまりを起こす前に、または根づまりを起こしていることに気づいたら一般的には植え替えを行います。
苔玉での植え替えとは
鉢植えなどでは植物によっては2〜3年に一度、一回り大きな植木鉢に植え替えて根が生長する余地を拡大させてやります。新しい培養土に替え、施肥を行います。この植え替えは根づまりに対しての最も簡潔な解決方法かもしれません。
しかし、現在出回っている苔玉の多くは、植物の根鉢が完全に苔でくるまれており、苔を剥がさないことには中の植物を取り出せません。つまり植え替えをするということは、苔玉をつくり変える形になってしまいます。これは致し方ないことなのですが、愛着を持って育てた苔玉を解体するのは切ないですよね。そうしなくて済むようにという意味でも、以前ご紹介した「苔の部分と植物の部分が分離した構造」の苔玉をオススメしているわけです。
とは言え既にお持ちの苔玉があるでしょうから、植え替え時につくり変えるという想定で進めます。
方法その1 一回り〜二周り大きい苔玉につくり変える
根鉢まわりの培養土の量を増やし、根の生長余地を拡大する目的があります。植木鉢の植え替えと同じです。新しい培養土に変え、植え替え時に施肥をしたりします。ただ、植物の種類によって植え替え方法や植え替えの適期が異なりますので、その植物の育て方の情報を確認してから実行に移しましょう。
ただ、1つ問題点があります。苔玉を大きくつくり変えると言ってもその大きさには限界があります。仮に1年に一度植え替えをしたとして、その度に苔玉の直径を1.3倍大きくすると最初は直径5cmだった苔玉も3回植え替えた3年目あたりから10cmを超えてきます。さらに大きく、となると作ることも困難になりますし、部屋に飾るには大きすぎるでしょう。
対策の1つとしては、いずれ庭や花壇、植木鉢に移植することです。これから購入するのであれば、将来的に移植する計画のもと、苔玉の植物を選択するのも手です。部屋に飾る用の苔玉を別途購入または作る必要が出てきます。
ずっと同じサイズを維持したい、もっと長く楽しみたいという方は植え替え時に次の方法を取る必要があります。
方法2 根の手入れをしてから植え替える
取り出した植物の根を一度ほぐして、枯れた根や太い根を切るなどして根のボリュームを少なくしてから植え替えます。ただ、植物の中には根を切ったり傷つけたりすると弱ってしまうものもありますので注意が必要です。そういう植物は基本的には前述の方法1で植え替えをすることになります。
根の手入れをした場合には、必ず本体の枝葉も剪定によってボリュームを減らさないといけません。植物の健全な生長は、葉と根のボリュームのバランスで成り立っています。これは植物内の水分・養分の需要と供給のバランスです。根だけ減らした状態だと茂っている葉の隅々まで水分や養分を供給できなくなるため、植物自身が葉をぽとぽと落としたり、葉が枯れたりします。
こまめに剪定をして生長を抑制する
植物の剪定には、「樹形を整える」「芽吹き・花つきを良くする」「植物の内部の日当たり・風通しを良くする」など様々な目的があります。こまめに剪定することで「生長を抑制」し、先ほどお伝えした葉と根のバランスを極力維持することで、徒長気味(放任)に育てた場合より根づまりまでの期間を先延ばしできる場合もあります。
植物によって剪定に適した時期、剪定のポイント、剪定方法が異なるのでむやみやたらに葉や枝を切り落とすのはやめましょう。下草に用いられるような草花は、剪定らしい剪定を必要としなかったり頻度が少なくて済むものが多いですが、本来低木〜高木になるような種類は剪定しないとあっと言う間に苔玉では窮屈になってしまいます。
苔玉で行う剪定については、たいそれた剪定道具を揃える必要はありません。ちゃんと切れるハサミがあれば大丈夫です(もちろん剪定したあとは雑巾などで拭いてくださいね)。小さい植物を剪定するときにあると便利なのはピンセットです。葉を間引いたり、新芽をつみとったりする時に重宝します。ホームセンターなどでも園芸用のピンセットが売ってます。
理想は苔玉も盆栽と同じように育てること!
盆栽は平たく小さい盆栽鉢に植えられていますが(もちろん大きいのもあります)、本来は大木になる木で樹齢何十年と経っているものでも、高さが2〜30cmくらいで保たれていたりしますよね。盆栽の愛好家や職人さんが愛情たっぷり手間暇かけて水やり、施肥、剪定、植え替え(根の手入れ)をしているからこそです。
盆栽の管理というととても奥深く難しいというイメージがありますが、それは育てることに加えて樹形を整えていくというテーマが奥深く、盆栽の世界で評価される樹形にするには高い技術を要するからです。松などメンテナンスが難しい樹種が多いのも難しいイメージにつながっているのだと思います。
しかし、育てるという部分においては盆栽も苔玉も同じ。水やりと施肥さえしておけば大丈夫というわけではありません。苔玉を長く楽しむためには、剪定や植え替えの知識も少なからずいるのです。
お探しの情報へはサイトマップから!
|
|