冬の苔庭管理・苔の育て方で押さえておきたいポイント
気象庁の定義では12月から2月までが冬。地域によって差はありますが、四季のはっきりしている日本では基本的に冬は寒いものですね。12月に入った頃から、落葉樹は徐々に葉を落とし、次の春が来るまでひと時の眠りについていきます。苔も立派な植物。冬の苔庭の管理はどうしたらいいかわからない方もいらっしゃるかと思います。
今回は一般住宅における冬場の苔庭管理や苔の育て方において、注意しておくべきポイントについてです。屋外管理している苔玉や盆栽の苔などにも共通して言えることなので参考にしていただければと思います。
冬場の苔の管理・育成で注意すべき点は2つ
日本国内でも地域によって冬場の環境は異なります。氷点下まで気温が下がる地域、雪が深い地域、雪はほとんど降らない地域、薄着でも過ごせる地域…。私の住む滋賀県でも、北は雪が深く、南は年に数回雪が降るか降らないかくらいと、同じ県内でも大きく違います。いずれにせよ、冬場の苔の管理について注意すべき点はこれから述べる2点です。
※本サイトでは「一般的な住宅でも苔を楽しむ」レベルに基準を置いている(過保護にしない)ため、お屋敷やお寺などのお金をかけて管理された立派な苔庭の管理規模まで言及いたしませんので、あらかじめご了承ください。
注意すべきは「寒風による乾燥」と「霜柱による持ちあがり」
苔は寒さに強い植物ですので、「寒い」ということに対して神経質になる必要はありません。苔は寒ければ寒くなるほど活動は鈍くなり、冬眠に近い状態で春になって気温が上昇するまでじっと耐えます。気温が上がってくると活動を再開し、また生長を開始します。冬場でも気温が10度以上あるような地域ではない限り、寒い冬場の間は基本的には降雨だけで神経質に水やりをする必要はありません。
苔の冬場の管理上、注意すべきは寒さよりも「乾燥」と「霜柱」です。
寒風による乾燥に注意すべし
季節を問わず、苔にとって極端な乾燥は株を弱らせる原因になります。もちろん、苔は簡単には死なないので乾燥したからといってすぐに枯れてしまうようなことはありませんが、特に寒風による乾燥はダメージが大きいように思えます。寒風にさらされることによって、杉苔など大型の苔で赤色っぽく変色することがあります。
冬場の乾燥を防ぐには、水やりという対処法ではなく、寒風が当たりにくい対策を講じることが重要です。本来は年間を通して風が入り込みにくくしておく(生垣や塀、目の少ないフェンスなど)ことが望ましいですが、そのような環境ではない場合は寒冷紗(かんれいしゃ)を苔の表面に限りなく近いラインで張ることで、寒風から苔を守ることができます。寒冷紗でなくても、あまり重量のないマルチング材を代用しても良いでしょう。松の葉を入手できるのであれば、後述の「敷き松葉」も有効です。
と言いながら、実は私はちょっと寒風が当たってしまうところでも、寒冷紗対策はしていません。もちろん寒風によって杉苔は赤っぽく変色してしまいますが、春になればまた緑が戻ってくるので、「苔の紅葉」と勝手に呼んで変色した杉苔の庭も冬場ならではの光景とポジティブにとらえています。変色を防ぎたければやはりしっかり寒風対策を行い、関東エリアなど冬場に極端に乾燥した強い寒風が吹き荒れるような地域でなければ、苔の変色さえ気にしなければ過保護に何かする必要もない、というのが私の持論です。
霜柱による持ちあがりは放置禁物
地中の水分が凍って膨張し、表土を押し上げる霜柱。苔は霜柱によるダメージをとても受けやすいです。ハイゴケやスナゴケなど、仮根が発達してない種類の苔はそのまま放置しておくと風などで飛ばされやすくなりますし、杉苔など仮根が発達している苔は仮根が霜柱によって切れてしまったり、根元から乾燥が進んで時には枯れに至ってしまうことがあります。
霜柱によって苔が持ち上げられているのを見かけ場合ですが、その状態で無理やり踏んづけて元に戻そうとしてはいけません。霜柱を踏むと「バリバリ」っと音をたてて壊れるのでモロいイメージがありますが、硬さがありますので無理に踏んづけるとマット状の苔が細かくばらけてしまう原因になりかねません。気温が上がった昼間などに、霜柱が溶けているのを確認して、苔と表土がしっかり密着するように平たい靴底などで圧力をかけて整えましょう。この時、苔が乾燥していているようでしたら、軽く水分を与えてから圧着させましょう。苔の種類によっては、乾燥した状態で触れるとモロモロとほぐれてしまうものもあるためです。
本格的な苔の冬対策例「敷き松葉」
お屋敷やお寺など、丁寧に管理されている苔庭では、苔の冬越しのために「敷き松葉」(しきまつば)を施すことがあります。敷き松葉とはその名の通り、針状の松の葉を苔の頭が見えなくなる程度に上から均一に撒く(敷く)手法です。寒冷紗と同様の効果があり、寒風による乾燥や霜柱による持ちあがりを防ぎます。お寺などで見学用に一般公開されている苔庭では、この敷き松葉を『冬の風物詩』と位置付けて観光の目玉にしているところもあります。敷き松葉の作業自体は、庭のその他の植栽の冬支度と合わせて、造園業者や庭師に依頼することが多いようです。
庭の広さによりますが、松葉を入手することができれば、個人宅でも敷き松葉はできないことはありません。
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